サービス残業の実態と対策
サービス残業をした経験はありますか?仕事が終わらず、計らずも残業となってしまった場合でも残業代がでない、あるいは請求できないといったケースが問題となっています。サービス残業が常態化すると、従業員の心身に良からぬ影響を及ぼしたり、法的にも問題となることがあります。サービス残業となってしまうケースや、どのような対策方法があるのかを示しながら、サービス残業に悩む人の、問題解決につながる情報をご紹介します。
サービス残業ってどういうことを指す?
定時時間内に仕事が終わらないことは多々あるものです。残業自体はどんな会社にもあるものですが、それが拘束時間を超えた過重労働であったり、違法な業務形態が常態化しているような場合は、さまざまな問題が発生することがあります。そのひとつがサービス残業の問題です。
そもそもサービス残業とは、就業時間外に行われた残業に対して、その対価(残業代)が支払われないことをいいます。労働基準法では、時間外に発生した労働に対しては時間外労働手当を支給することが定められているため、これに反すると労働基準法違反となります。
通常、労働基準法違反に該当するかどうかは、タイムカードや勤怠表など時間単位での勤務状況がわかる資料で確認します。しかしサービス残業は、従業員が上司の顔色を気にしてあえて勤怠を記入しなかったり、悪質な場合は会社が従業員に記録を残さないよう指示をするため、サービス残業が記録として残らず結果的に違法労働としての実態が把握されにくいという現実があります。
サービス残業をする時間はどれくらい?
日本においてサービス残業はどれくらいの時間行われているのでしょうか。サービス残業の実態としては、2015年に日本労働組合総連合会が20~59歳の男女雇用労働者を対象にインターネット調査を行った結果が公表されています。その内容によると、4割強の雇用労働者が「不払い残業(サービス残業)をせざるを得ないことがある」と回答しています。その平均時間は一般社員で月18.6時間で、週5日勤務だとすると一日平均1時間弱のサービス残業をしているという結果になります。
一日の残業時間としては決して多くはない時間と感じるかもしれませんが、だからこそ意識が曖昧になり、サービス残業が広く蔓延する一因にもなっているといえるでしょう。たとえば、外回りの仕事で帰社の時間も不規則、帰社後も事務仕事をして気付いたら22時を過ぎていた、ということはよくある話です。
しかし、そういう毎日が続き常態化してしまうと、次第に時間外勤務をどれだけ行っているのかということにも目が向かなくなり、結果サービス残業問題の表面化を妨げることになってしまうのです。
どんな風に働かされる?サービス残業の実態
勤務時間が伸びたことを報告せず、時間外労働賃金を請求しないのは良いことではありません。「うっかり報告するのを忘れてしまった」という自分のミスの場合もありますが、会社が意図的にサービス残業を奨励しているという悪質なものも存在します。
たとえば、残業が発生することを前提として、定時の打刻(タイムカードを押させるなど)を強要するケースなどです。時間外労働が原因の労働基準法違反が発覚した場合には、該当部署の労働実態が調べられます。その場合にまず証拠として確認されるのがタイムシートなどの勤怠状況を示す書類ですが、残業をしているにもかかわらず、定時を打刻あるいは勤怠表に記入させて正当な勤務状況であるかのように装うので、必ずしも実情が調査結果に反映するとはいえません。
これは、会社という組織ぐるみで時間外労働賃金の支払いを回避するという、法を欺き労働者の権利をも奪う最も悪質な例です。また、残業時間を詐称しない代わりに、定時刻前(始業前など)から業務を開始させる場合もあります。さらに、サービス残業をさせたい社員を形だけ管理職にさせ、時間外労働の対象外とさせる例や、会社でのサービス残業にならないよう、仕事を持ち帰らせる場合もあります。
サービス残業をしないための対策方法
サービス残業は労働基準法違反であり、それが常態化している場合は賃金の未払いや、従業員の健康被害を引き起こす恐れがあります。労働環境の悪化を防ぐためにも、サービス残業をしない(させない)ための対策が必要です。
その方法としては3つあり、1つはサービス残業の問題点をまとめることです。なぜサービス残業になっているのかなど、サービス残業になった背景を浮き彫りにし、問題点を細かく洗い出すことで解決に向かうヒントを模索します。2つ目はサービス残業の証拠を集めることです。サービス残業の実態を正確に報告するために、タイムシートなどの勤怠の状況が分かる資料やメールの送信履歴など、遅くまで仕事をしている実態が分かる資料を集めます。そして3つ目は、労働基準監督署に通報することです。会社からのサービス残業の強要や、会社に掛け合っても是正してもらえないような場合は、通報するという手段もあります。
さらに、従業員一人ひとりができる対策として、正当な残業代をきちんと請求すること、サービス残業になりそうな場合ははっきりと拒否することなどが挙げられます。ただし残業を拒否する場合などは、人間関係に影響がでる可能性もあるため、状況を考慮して行動することも必要でしょう。
まとめ
サービス残業は正当な賃金を得られないばかりか、疲労がたまり精神的に追い詰められるなどさまざまな問題を引き起こす可能性があります。勤務先でサービス残業が横行している実態がある場合は、状況をよく見ながら、できるところから対策を行っていくことが重要です。