裁量労働制、残業時間の上限は?残業代出ないのは違法?

裁量労働制だからといって、上限なく働いて残業代が出ないのは納得いかないですよね。でも、そもそも「裁量労働制だから残業代が出なくても仕方ない」と思うこと自体に誤解があります。

 

裁量労働制が認められるためには高いハードルがあり、多くの会社がそれを満たさず会社にとって都合のいいように悪用しています。しっかり残業代を請求できるケースが多いので、ぜひチェックしてみてください。

 

そもそも裁量労働制って?

(そんなのわかってるよ!という場合は飛ばしてもらって大丈夫ですが、)そもそも「裁量」というのは、人の指図をうけずに自分の判断で物事を自由に切り盛りできることを指します。そのことから裁量労働制は、仕事の性質上、労働時間や仕事の進め方に関して上司の指示や制約を受けない代わりに、労働時間ではなくて成果に応じて給料が支払われるスタイルをいいます。

 

簡単に言うと、「出社時間も退社時間も自由ですよ。ただ、仕事はしっかりやってね」ということ。

 

会社は裁量労働制で働く社員に対して命令できないことになっているので、「この仕事は◯◯のようにやれ!」などと細かく仕事の進め方を指示できません。

 

また、労働時間に関しても「今日はデートだから15時で帰ろう。そのぶん明日は23時まで働こう」という自由な働き方ができることが前提です。

 

人気になったTVドラマのドクターXで例えたら、主役でフリーランスの女医が「わたし、失敗しないので」と言ってオペをきっちりこなして成果を出すことに専念、それ以外は誰からも仕事の指図をうけずに、残業もしない自由奔放な働き方と同じです。

 

裁量労働制は労働時間の配分を社員に任せる形になるので、実際に働いた時間ではなく、みなし労働時間といって、「◯◯時間働いたものとみなして給料を支払いましょう」という考え方が適用されます。

 

例えば「労働時間を1日8時間とみなす」と決めておくと、実際の労働が1日10時間でも、1日5時間でも労働時間が8時間とみなされる制度です。

 

残業時間の上限はないの?

「裁量労働制は実際の労働時間にとらわれない契約で残業という考え方がないので、残業時間の上限なんてないよ」、そんなふうに思われがちですが、そんなムチャクチャなことはありません。それじゃ奴隷と同じになってしまいますからね。

 

そもそも給料というのは汗みず流して働いた対価、という考え方は裁量労働制も変わりません。

 

労働時間にとらわれないとはいっても、みなし労働時間というものが設定されているので、実際の労働時間がみなし労働時間を超えれば、そこからは時間外労働=残業となり、残業代をもらうことができます。

 

残業代出ないのは違法?

実際の労働時間がみなし労働時間を超えた場合、会社は残業代を支払わなければなりません。

 

例えば、「週40時間働いて年棒が700万円」という契約をしたものの、実際には仕事量がハンパなくて週80時間も働いているというような場合には、その差額40時間分の残業代を請求できます。もしそれを拒んだりしたら違法です。

 

さらに言えば、深夜労働(午後10時〜翌日午前5時)や休日出勤した場合には、会社は割増賃金を支払う義務があります。

 

会社から「ウチは裁量労働制だから残業代は出ないよ」と説明されて、労働法の知識がないために当然だと受け入れてしまっている人がとても多いですが、裁量労働制だからといって残業代が支払われなくてもしかたがない、というのはまったくの誤解で、それは会社の違法行為です。

裁量労働制の悪用がまかり通っている

裁量労働制は、それを適用できる業務が厚生労働省で具体的に決められているうえ(専門業務型労働裁量制と企画業務型労働裁量制)、たとえその業務に該当していても法律が定める厳しい手続きをみたしていないと導入できないことになっています。

 

そういった手続きを踏まずに制度を導入した気になっている「なんちゃって裁量労働制」の企業が、社員を安く、長く働かせるために悪用していることがあります。

 

少なくとも新卒で入社した新入社員がいきなり裁量労働制の対象になることは普通ではありえません。なぜか多くの社員に適用されているといった場合には、本当に正しく制度が適用されているか、疑ってみる必要があります。

 

【裁判事例】エーディーディー事件(大阪高裁平成24年7月判決)

会社の主張する裁量労働制が否定され、未払い賃金の支払いが命じられた事例です。

内容 SE(システムエンジニア)社員の担当業務が専門業務型裁量労働制として認められる「情報処理システムの分析又は設計の業務」であると主張する会社に対し、社員が残業代等の支払いを求めた
争点 SE社員の労働の実体が専門業務型裁量労働制に該当するかどうか
判決 業務の実体から専門業務型裁量労働制で求められているSEとはいえず、また、管理監督者とも認められないことから会社側に未払い賃金等の支払いが命じられた
会社側が負けた理由

1.対象業務がシステム設計の一部であったこと。(→本来裁量労働制が認められるシステム設計業務は、システム全体を設計する技術者が、どこから手をつけどのように進行させるのかについて裁量性があるからで、システム設計の一部しか携わっていない状態は裁量性があるとは言えない)

 

2.タイトな納期の設定があったこと。(→その状態では裁量労働制が適用される前提である業務遂行の裁量性は、なくなっていたと判断された)

 

3.未達が生じるほどのノルマを課されていたこと。(→専門業務型裁量労働制に含まれないプログラミング作業のノルマを課すなど、営業活動にも従事していたという事情もあり、拘束性の強い具体的な業務指示があったとされた)

 

まとめ

裁量労働制には残業はないと言われますが、深夜労働(午後10時から翌日午前5時)や休日出勤には割増賃金が必要なほか、みなし労働時間が所定労働時間を超えた場合、超えた労働時間は時間外労働となり、会社は残業代を支払わないといけません。これを拒むことは違法です。

 

裁量労働といいながら実際には細かい指示を出していたり、法律で決められた協定を結んでいないケースは多く、そのような場合はそもそも裁量労働ではないので、残業代はすべて請求できます。

 

またどんな仕事をしていようが社員を裁量労働制に無理やり押し込めてしまう悪どい経営者も少なくありません。残業代を請求する前に、契約時の取り決めとあまりにもかけ離れているから、給料をあげてください!というような交渉も戦術のひとつです。

 

 

 

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