自己都合と会社都合の退職はどう違う?
退職には、会社が一方的に労働者を退職させる「会社都合退職」と、労働者が自分の都合で退職する「自己都合退職」があります。どちらの退職に該当するかで失業給付の給付開始日や給付期間などが違ってきて、もらえる失業給付に差が出てきます。できるだけ有利な退職になるように、この2つの退職のメリットとデメリットを知っておきましょう。
自己都合退職で辞めることのメリット・デメリット
自己都合退職とは、雇用されている労働者が転職や転居、出産などの自分自身の事情で退職することです。
この場合のメリットは、次の仕事を探す場合に悪い影響を与えないということです。もしも会社都合で退職した場合、倒産のような労働者には責任のない理由ならば仕方ありませんが、そうでなければ新たな職を探す場合に、前の会社で何か問題を起こしたのではないかと疑われてしまいます。しかし自己都合ならばそのようなことはなく「キャリアアップのため」などと前向きな理由を挙げることが可能です。そのため、転職活動がしやすいのです。
自己都合退職にはデメリットもあります。失業給付(失業手当)を受け取るまでに時間がかかることと、給付期間が短くなることです。ハローワークに離職票を提出してから待機期間の7日の後、給付金を受け取るまでに3ヵ月が必要です。しかも、給付期間は90日から150日と会社都合の退職の場合よりも短くなっています。この給付期間は、雇用保険の被保険であった期間によって変わってきます。
会社都合退職とは何?押さえておきたいメリット・デメリットとは
会社都合退職とは、倒産や、経営不振によるリストラなどによって、会社が一方的に労働契約を解除して労働者を解雇してしまうことです。ただし懲戒解雇の場合は、自己都合になります。
メリットは、失業給付を早く、しかも長く受け取れることです。待機期間の7日の後、1ヵ月後には第1回目の給付金が支給されます。給付期間は90日から330日と、自己都合の場合に比べて長くなっています。なお給付期間は、雇用保険の被保険者であった期間だけではなく、年齢によっても異なってきます。たとえば45歳以上60歳未満の人で被保険者の期間が20年以上であれば、給付期間は330日です。
さらに「解雇予告手当」をもらえることもあります。会社都合の場合、会社は労働者に少なくとも30日以上前に解雇を予告しなければなりません。その予告ができない場合は、30日に足りない分の平均賃金を代わりに受け取ることができるのです。たとえば、20日前に解雇を予告された場合、30日に足りない10日分の平均賃金を受け取ることができます。これは、突然の解雇によって労働者の生活が困難になることを防ぐ目的で設けられた制度です。
けれども、会社都合の退職にもデメリットがあります。再就職先を探す際に、就業態度が悪かったりトラブルを起こしたりしたので前の会社から解雇されたのではないかと疑われてしまうことです。その結果、転職しにくくなってしまいます。もちろん、倒産など労働者に原因がないことが明らかな場合はデメリットにはならず、むしろ積極的に採用してもらえる可能性が高くなります。
ちょっと待って!その退職理由「会社都合」になるかも?
会社都合の退職は自己都合の場合よりも失業給付が多くなりますから、労働者にとっては会社都合であった方が良いとも言えます。会社の倒産や経営状態の悪化で大量に解雇者が出た場合などは、会社都合というのはわかりやすいのですが、それ以外の場合でも、たとえ労働者が自分から退職を申し出たときでも、会社都合の退職になることもあるのです。たとえば、会社が早期退職者を募ってそれに応じたケースや、賃金や職種、労働時間などの採用条件が実際の労働条件と大きな違いがあった場合です。また、給料が従来の85%未満に減額された場合や、通勤が困難な場所に勤務地が移転した場合も該当します。パワハラやセクハラなどが原因で辞めたときも、会社都合と判断されることが多いのです。
このような場合、離職票では自己都合となっていても、ハローワークで会社都合として処理してもらえることがあります。ハローワークで失業保険の手続きをする際に、離職票に書いてある退職理由に納得いかなければ、証明できる書類などを提示して相談してください。
退職前にどちらに該当するかしっかり見極めよう
自己都合か会社都合かで、もらえる失業給付が大きく違ってきますから、退職の際は自分の理由はどちらに該当するかをあらかじめ考えておく必要があります。会社都合の退職の方が、もらえる失業給付が多くなりますから、労働者には好ましいと言えます。もっとも、再就職の際に不利になるというデメリットは軽視できません。これから先のキャリアプランを見据えて、どちらの方が自分にとっては望ましいのか考えましょう。
会社は、会社都合による解雇をすることで補助金や助成金を受け取れなくなくなることもありますし、会社のブランドに傷を付けたくないという意識も働きますから、できるだけ自己都合にさせようとすることが多いのです。そのため、会社から言われるままに自己都合だと思い込まず、本当はどちらなのかを判断しなくてはいけません。本来なら会社都合になるのに、労働者が自己都合退職だと思い込んでしまわないように注意してください。