残業代に関する法律ルール、その全てをやさしく解説

残業代のことって、わかっているようで実際には正確に説明することが難しいものです。このページでは、どんな場合にどのくらいの残業代がもらえるのか、残業代の基本知識を法律の観点から解説しています。正しく残業代を支給されているかチェックしてみてください。

 

そもそも残業代が支給されるのはどんなとき?

「そんなの言うまでもなく、決められた労働時間を超えて働いた場合でしょ!」ということになりますが、ここではもう少し法律的にみてみましょう。労働基準法という法律で、労働時間は1日8時間、1週40時間を超えてはダメと決められています(これを法定労働時間といいます)。そして週1日以上、休日を確保しなくてはならないことも定められています。これが、会社に課せられた義務なので、このルールを超えて社員を働かせた場合に会社は残業代を支払わなければなりません。もう少し具体的に言うと、以下のケースが該当します。

 

▼法律で定められた残業代をもらえるケース

  1. 1日8時間を超えて働いた場合
  2. 1週40時間を超えて働いた場合
  3. 休日労働をした場合
  4. 深夜労働(午後10時〜午前5時)をした場合

 

ときどき、「自分は最初から残業代が支払われない契約だから関係ない」と言う人がいますが、それは大きな間違いです。仮にそういった契約で会社と合意し納得して働いていたとしても、会社側には残業代を支払う義務があります。労働基準法は働く人を保護する法律で、最低の労働条件を定めています。これ以上の劣悪な労働は認めないよという最低ラインなので、その条件を下回る契約自体が無効になります。なので会社から「ウチは残業代ないから」と言われて、残業代が支払われていないとしたらそれは違法な状態です。

 

 

法律上、残業代はいくらもらえる?

上で説明したケースに該当すると、残業代が支給されるわけですが、どのくらいもらえるかも労働基準法で最低ラインが決められています。そもそも残業代というのは通常の賃金に対して割り増しした金額になっているのですが、その割増率は次のように決まっています。

 

▼ケースごとの賃金の割増率

区分

割増率

時間外労働 通常の賃金の25%以上の割増(※)
休日労働 通常の賃金の35%以上の割増
深夜労働 通常の賃金の25%以上の割増

※大企業の場合、1か月60時間を超える残業は50%以上の割増になります

 

通常の賃金というのは、通常の労働時間の1時間あたりの単価、つまり時給に換算した金額だと思ってください。例えば、1か月の給料が24万円で所定労働時間が160時間(1日8時間労働×20日)だとすると、1500円(24万円÷160時間)になります。そうすると、それぞれの1時間あたりの割増賃金は次のような計算になります。

 

▼ケースごとの1時間あたりの割増賃金

区分

割増賃金の額

時間外労働 1500円×1.25倍=1875円
休日労働 1500円×1.35倍=2025円
深夜労働 1500円×1.25倍=1875円

 

深夜労働について補足すると、午後10時〜午前5時の深夜労働の場合は単純に25%増しですが、たいていは朝から働いて深夜まで仕事が及ぶことがほとんどですよね。そのように時間外労働と休日労働が深夜に重なったときは、次のように合計した割増率になります。

 

▼ダブルで割増になるケースと割増率

区分

割増率

時間外労働が深夜に及んだ場合 50%(25%+25%)以上の割増
休日労働が深夜に及んだ場合 60%(35%+25%)以上の割増

 

前の例で1時間あたりの賃金に換算すると、

区分

割増率

時間外労働が深夜に及んだ場合 1500×1.5倍=2250円
休日労働が深夜に及んだ場合 1500円×1.6倍=2400円

となります。

 

ちなみに、はじめに説明したようにこれらの割増率は法律で定めている最低ラインですので、もしこれより低い場合は違法な状態だと思ってください。

 

36協定が結ばれているから残業代でないはウソ

ワンマン社長の中小企業などで、「ウチは36協定が結ばれているから、残業代を支払わなくていいんだ!」というように言われることがあるかもしれません。でもそれはワンマン社長の無知か、わかっていてそれを口実に残業代を支給していないだけなので、請求することごできます。

 

ちょっとおさらいですが、法定労働時間を超えて社員を働かせる場合には、残業時間の上限などについて、会社と労働者間で約束を結び、労働基準監督署に届ける必要があります。労働基準法36条にもとづくため「36協定(さぶろくきょうてい)」と呼ばれています。ただこの36協定は、あくまで残業させても罰せられないだけのことで、残業代を支払わなくていいということにはなりません。さらにいうと、36協定を労働基準監督署に届けていなかったり、1年の有効期間経過後に必要な手続きをしていないケースもあります。そういう場合はそれだけで会社は行政の取り締まりの対象になります。

 

残業代が支給されない例外も

一部ではありますが、このページで説明している通りに残業代が出ないケースがあります。ここではそれぞれの詳しい説明は省きますが、次のような特殊な働き方をしている場合です。

 

上記のケースでは、通常の労働とは違って型通りの残業代は支給されません。ただ、だからといって1円たりとも残業代がでない、というわけではありません。詳しく知りたい場合は上記の青色リンク部分からそれぞれの説明ページへ移ってください。

 

残業代請求の時効ってある?

ここまでの説明を読んで「マジですか?いままで残業代をもらえていなかったけど、本当は請求できるんだー!」と思ったかもしれません。もちろん違法は違法なので請求する権利はあるのですが、どれだけ昔にさかのぼってもOKというわけではありません。何事にも時効があるように、残業代の請求権についても2年の時効があります。時効の部分まで支払ってくれるような誠実な会社は現実的にはないので、最大2年が未払い残業代を請求できる期間になります。

 

まとめ

法定労働時間を超えて残業した場合は、最低でも通常の賃金の25%以上の残業代が保障されています。残業なしの契約で働いているとか、入社したときから「ウチは残業代ないから」と会社に言われていたとしても関係ありません。残業代の支払いは労働基準法で定められている会社の義務です。もし、残業代が支払われていないのなら過去2年までさかのぼって請求する権利があります。

 

スポンサーリンク